真空の基礎

真空の分類

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真空は圧力帯による分類と平均自由行程による分類の2種類があります。

圧力帯による分類は「低真空」「中真空」「高真空」「超高真空」に分けられます。
平均自由行程による分類は「粘性流」と「分子流」の2つに分けられます。

圧力帯による分類

真空の定義にて通常の大気圧より低い圧力で満たされた空間を真空としています。気体分子の数で考えると、気体分子が0個の何もない空間から気体分子が2.6875×1022個までが真空です。この後に解説する真空計や真空ポンプの測定原理や測定方法によって、大きく4つに分類しています。

呼び方圧力帯[Pa]1Lの気体分子の数[個]
低真空105~1021022~1019
中真空102~10-11019~1016
高真空10-1~10-51016~1012
超高真空10-5以下1012以下
(参考)極高真空10-9以下108以下

目的とする圧力帯で使用する真空計、真空ポンプ、真空構成部品が変わってきます。また、取り扱い方法も大きく変わってきます。例えば、高真空領域以降では手指の油分が圧力に影響をあたえてしまうために、ビニール手袋を着用して作業を行います。

平均自由行程による分類

平均自由行程の計算方法は平均自由行程にて解説しています。この平均自由行程と代表長さの比率で分類する方法になります。代表長さとは配管径だったり、真空容器の大きさなどです。配管径や真空容積の一番小さい寸法を代表長さとすることが一般的です。分類は下記のとおりです。

分類クヌーセン数
粘性流Kn<0.01
遷移流0.01<Kn<0.3
分子流Kn>0.3
粘性流と分子流の分類

クヌーセン数の計算方法は下記になります。

(\( Kn=\frac{λ}{D} \))

Kn:クヌーセン数
λ:平均自由行程[m]
D:代表長さ[m]

例えば、配管径が0.1m(10cm)の時に平均自由行程が1mm(圧力としては0.15Pa)の場合はクヌーセン数は0.01となり粘性流という事になります。配管径は0.1mと同じですが、平均自由行程が3cm(4.5Pa)の場合には分子流となります。

粘性流の場合には分子同士の衝突が頻繁に発生していて、連続体として考えることができますが、分子流の領域では気体分子が独立して動き回っている状態になります。

粘性流(左)と分子流(右)