酸素が少なくなると何か良いことがあるのでしょうか?
酸素が少なくなることによって、酸化を抑えることができます。また、微生物の活動を抑えることができます。
空気は窒素が約80%、酸素が約20%で構成されています。物が燃えるのは空気中に酸素があるからです。真空にするという事は窒素が約80%、酸素が約20%の比率は変わりませんが、気体分子の数が少なくなるという事です。つまり、酸素分子の数も少なくなります。酸素が少なくなることでいろいろな効果が期待できます。
酸化による劣化が少なくなる
食品が傷む理由は、細菌による劣化、酸化による劣化、酵素による劣化の3つです。真空にすることで酸化による劣化を抑えることができます。また、多くの細菌は活動するのに酸素が必要です。活動するための酸素がないので、細菌による劣化を防ぐことができます。
食品が傷む理由は下記の3つです。
・細菌による劣化
・酸化による劣化
・酵素による劣化
食品を長持ちさせるには、冷凍保管が一般的ですが、冷凍保管の場合、低温になるために細菌の繁殖による劣化を防ぐことができ、低温になると酵素が失活するので、酵素による劣化を抑えることができます。しかし、水分の抜け、酸化による劣化については防ぐことができません。食品を真空にして冷凍することによって、水分の抜け、酸化による劣化を抑えることができます。真空パックを冷凍保管することにより、食材をより長持ちさせることができます。
また、真空パックすることにより調味液が食品内に含侵しやすいという利点もあります。マリネなどを作る際には食品と調味液を容器に入れ、真空パックすることで短時間で作ることができます。この様な真空の利用方法を真空含侵と言います。
金属の熱処理の必要性
一般的に動力を伝えるための歯車は、大きな力を伝えるためにじん性(粘り強さ、割れにくさ)が必要になりますが、歯車の表面については摩耗しないように硬さが必要です。このじん性と硬さは相反する性質です。ガラスは硬いけど割れやすい…これは硬いけどじん性が悪いという事です。一方でゴムは割れにくいけど、柔らかいです。この問題を解決する方法として「熱処理」があります。
熱処理とは金属の機械的性質(硬さ、じん性、加工性など…)を改善するために行われる処理の事です。先程の歯車を例に挙げると、素材を歯車に加工する際には加工性を良くするために、加工までに焼きなましを行います。加工時に発生したひずみを除去するために焼きなましという熱処理が行われます。その後、歯車を硬くするために焼き入れという熱処理が行われます。最後に歯車のじん性を向上させるために焼き戻しを行います。
熱処理は大きく分けて4つの方法があります。
・焼き入れ 材料を変態点以上に加熱し、急冷します。
→材料を硬くします。
・焼き戻し 材料を変態点以下で加熱し、空冷します
→内部応力の除去。焼き入れ後の硬さ調整
・焼きならし 材料を変態点以上に加熱し、空冷します。
→加工性の向上
・焼きなまし 材料を変態点以上に加熱し、炉令します
→内部応力の除去、加工性の向上
真空中での熱処理
熱処理を大気中で行うと、材料の表面が酸化してしまいます。また、酸化によって色も変わってしまいます。真空中で行うことで、表面が酸化せず、変色も抑えられた状態で熱処理を行うことができます。
真空中での材料の加熱方法はカーボンヒーターを用いて輻射で行いますが、冷却方法は不活性ガス(窒素)を真空容器に導入して冷却を行います。また、不活性ガスの導入量によって冷却速度を制御することが可能です。
加熱する温度、不活性ガスの導入量の調整を行い、焼き入れ、焼き戻し、焼きならし、焼きなましなどの熱処理を行います。
まとめ
真空にすると酸素が少なくなります。少なくなることによって、微生物の活動を抑えることができ、食品の酸化による劣化を抑えることができ、食品を長持ちさせることができます。
工業用途においても真空中で熱処理を行うことによって、表面の酸化や変色を抑えることができます。