排気時間の計算方法について解説します。
粘性流領域と分子流領域
真空の分類で解説しましたが、平均自由行程による分類で粘性流と分子流を解説しました。実は粘性流領域と分子流領域では計算方法が異なってきます。
ご自身がどの領域の排気時間の計算を行いたいのか明確にしましょう。
基本の考え方
所定の圧力に排気するにあたって、前提となる基本式があります。その基本式は下記になります。
\( P= \frac{Q}{S} \)
P:圧力[Pa]
Q:漏れ量[Pa・m3/sec]
S:排気速度[m3/sec]
圧力は排気速度の逆数と漏れ量で決まってくるという事です。いくら大きな排気速度のポンプを選定しても、漏れ量が大きければ圧力が下がりません。一方で漏れ量が多くても漏れ量以上の排気速度を持った真空ポンプを選定することによって、真空容器内の圧力を下げることができます。
ここで言う漏れ量とは真空容器、真空配管、真空ポンプで構成される真空排気系以外からの空気などの漏れ、真空容器、真空配管の表面からの放出ガスがあります。
気体の流れやすさ(コンダクタンス)
真空容器と真空ポンプを接続する配管を真空配管と言います。真空配管は細い配管より太い配管が良いとされています。また、真空配管の長さも長い配管より短い配管が良いとされています。
真空配管をストローに置き換えて考えてみましょう。太いストローと細いストローではどちらが吸いやすいでしょうか? 同様に長いストローと細いストローではどちらが飲みやすいでしょうか?
これらの飲みやすさ…つまり気体の流れやすさを「コンダクタンス」と言います。排気時間を計算する上ではコンダクタンスが必要となります。
まとめ
排気時間を計算するには以下の情報が必要です。
どの領域の排気時間を計算するか?
真空容器の容積
真空ポンプの長さと太さ(コンダクタンスの計算に必要)
真空ポンプの排気速度
真空容器内面の表面積と表面処理状態(高真空領域以降の排気時間の計算に必要)