ここでは粘性流領域の排気時間の計算方法について解説します。
準備するもの
粘性領域の排気時間の計算に必要なものは下記になります。
使用する真空ポンプの排気速度曲線図
真空容器の内容積
真空配管の長さと内径、曲げ回数
真空ポンプの排気速度曲線図
真空ポンプの排気速度曲線図とは下図の様なものです。一般的にグラフで提供されることが多く、真空ポンプメーカーから値で提供されることはありません。従って、グラフから数値を読み取るという作業が必要になります。
グラフから数値を読み取るのは大変ですが、最近ではフリーソフトでグラフ読み取りツールがあります。「グラフ読み取り」でググれば、いろいろなアプリやHPがヒットします。いくつか試してみて、使い勝手の良いアプリを探してみてください。
さて、排気速度曲線図に話を戻します。下記のグラフについてですが、実は同じ真空ポンプの排気速度曲線図になります。左側はX軸・Y軸ともにリニア表示となっています。真ん中はX軸は対数表示、Y軸はリアに表示です。右はX軸・Y軸ともに対数表示となっています。
各真空ポンプメーカー左のX軸・Y軸ともにリニア表示で提供されることはなく、真ん中のX軸は対数表示、Y軸はリアに表示(片対数表示)か、右のX軸・Y軸ともに対数表示(両対数表示)で提供されるのが一般的です。
もし、左側の両対数表示で提供されている場合には注意が必要です。グラフ読み取りツールで排気速度を読み取るときに誤差が大きくなってしまうからです。可能な限り、片対数表示で排気速度を読み取ることを推奨します。
真空容器の内容積
真空容器の内容積を決める、あるいは真空容器の内容積の確認を行ってください。
真空配管の長さと内径
真空容器と真空ポンプは真空配管で接続することになります。一般的には太くて短い配管が好まれます。この真空配管の長さと内径を決める、あるいは確認を行って下さい。
排気時間の計算
真空容器の排気時間を算出する場合には、真空容器に接続している吸入口での排気速度を算出し、排気時間の計算を行います。
吸入口の排気速度は真空ポンプの排気速度と真空配管コンダクタンスから算出されます。
ステップとしては下記になります。
①真空配管のコンダクタンスを算出する
②真空ポンプの排気速度と真空配管のコンダクタンスから、吸入口の排気速度を算出する
③吸入口の排気速度から真空容器の排気時間を算出する
この時、真空ポンプの排気速度曲線図を見て頂ければわかりますが、排気速度は圧力に応じて変化します。つまり、上記の①~④の計算を各圧力毎で計算して、その合計が排気時間になるという事になります。
実際の排気時間の計算
実際の排気時間の計算については「粘性流領域の排気時間の計算②」で紹介します。