粘性流領域の排気時間の計算②の結果を考察してみましょう。最適なポンプを選定するには必要な作業になります。
結果のおさらい
下記の真空系において、大気圧から2Paまで排気するために必要な時間は141秒でした。
真空ポンプの排気速度と実効排気速度
真空ポンプの排気速度は青色の線になります。場所Aの排気速度は実際にどうなっているのでしょうか? 真空配管のコンダクタンスを考慮した結果が赤色の線になります。ちなみに縦軸の単位はm3/Secになっています。
1000Pa程度までは真空ポンプの排気速度と場所Aの排気速度はほぼ同じですが、1000Pa以降では真空配管のコンダクタンスが大きくなり、真空ポンプの実力を発揮できていません。この真空ポンプの排気速度曲線を見る限りでは、この真空ポンプの特徴は1000Paから排気速度が急激に上昇するという特徴を持っています。しかし、場所Aの排気速度は1000Paより低い圧力では排気速度が上昇せずに、むしろ低下しています。
なぜ、そうなった? その1 配管径
理由は簡単です。真空配管が細いからです。現在は0.1mの配管を用いていますが、仮に0.2m、0.3mに変更した場合の結果が下記になります。
配管径を太くすることで真空ポンプの排気速度に近づいてきました。配管径を太くすることによって、この真空ポンプの特徴を活かせることがわかります。
その真空ポンプで良いのか?
配管径0.1mでは、真空ポンプの特徴を活かせていないことがわかりました。では、真空ポンプの排気速度を2/3、1/3にした場合はどうなるか計算してみましょう。計算結果が下記のグラフになります。真空ポンプの排気速度が小さくなると、排気時間は伸びてしまいますが、排気時間が許容できるのであれが2/3の排気速度、1/3の排気速度のポンプを選定してもよいかと思います。
今回の場合、2/3の排気速度のポンプが良いという結果になりました。
結論
上記より、細い配管だと真空ポンプの本来の性能を活かしきれていない事がわかりました。また、必ずしも大きなポンプを使うのが良いという訳でなく、最適な排気速度の真空ポンプを選定した方が良いという事がわかりました。
一般的に真空配管は太い=高価、細い=安価になりますが、細い配管で運用すると、真空にする時間が長くなり、機会損失につながります。また、排気速度の大きい真空ポンプ=高価、排気速度の小さいポンプ=安価ですが、小さいと排気する時間が長くなり、大きいと排気する時間は短くなりますが、細い配管で排気速度の大きな真空ポンプの組み合わせでは、高価な排気速度の大きい真空ポンプの性能が活かしきれていません。
最適な配管、最適な真空ポンプを選定するようにしましょう。