気体の対流がないと何ができるのでしょうか?
音が聞こえるのは、音源で発生した空気の振動が私たちの耳まで届くからです。真空中に音源を設置した場合はどうなるでしょうか?真空では振動する空気がないので音は伝わりません。
大気圧では、気体分子が音や熱を伝えますが、真空中は気体分子が少ないので対流がないので、音や対流による熱の移動がありません。
熱の移動方法
熱は3つの方法で移動します。伝導、対流、放射の3つの方法になります。
伝導とは接触によって熱を移動する方法です。熱いものを触って熱いと感じるのが伝熱による熱の移動になります。
対流とは温められた気体や液体が移動することでほかの物質に熱が移動するのを対流と言います。エアコンで部屋を暖めるのが対流になります。
輻射とは熱が電磁波の形でほかの物質に熱が移動するのを輻射と言います。太陽によって地表が温まるのは放射によって温まります。
熱の移動は伝熱、対流、輻射の3つです。
真空中での熱の移動
真空中の熱の移動を考えてみましょう。真空中には気体分子が少ないので対流による熱の移動は少なくなります。真空中での熱の移動は主に伝導と放射によって熱を伝えることになります。
対流による熱の移動について考えてみると、高温の物体に気体分子が衝突すると、気体分子は高温の物質から熱を奪います。熱を奪った気体分子は次に衝突した気体分子に熱を奪われます。この様に「衝突→熱エネルギーの移動→衝突→熱エネルギーの移動」と繰り返され、高温の物質は温度が冷えていきます。
気体の種類によって、奪う熱エネルギーが異なります。水素は熱を奪いやすい気体でアルゴンは熱を奪いにくい気体です。
真空中でガスを流して冷却を行う場合、アルゴンガスを使用しても冷えにくいという事になります。
真空の活用事例の一つに真空炉というものがあります。大気圧で鉄などの金属を加熱すると大気中の酸素と鉄が結合して、表面が酸化鉄で覆われてしまいます。一方で真空中で加熱すると真空中では気体分子が少ない…つまり、酸素分子も少ないので、酸化しない…つまり、酸化鉄の発生を抑えられます。
では、どの様にして、加熱するのでしょうか? 輻射を用いて加熱します。真空中でハロゲンヒーターやカーボンヒーターを用いて鉄などの金属を加熱します。
断熱ができる
まほう瓶をご存じでしょうか? 魔法瓶は二重構造になっていて、二重構造の隙間部分が真空になっています。隙間部分を真空にすることで、通常は暖かい液体の熱が容器を伝わって放熱されますが、まほう瓶の場合は二重構造の隙間部分を真空にすることで対流による熱の移動を抑えることができます。また、内面を鏡面にすることで輻射による熱の移動を抑えることができ、暖かいものは暖かく、冷たいものは冷たく長時間維持することが可能になります。
まほう瓶のような使い方を真空断熱と言います。まほう瓶のほかに冷蔵庫に使われる断熱パネルや建具の断熱ガラスなどがあります。