大気圧より圧力が低い状態を真空と言います。
真空とは、通常の大気圧より低い圧力の気体で満たされた空間内の状態で、圧力そのものではないと日本産業規格で定義されています。
空気が薄くなるという事は、圧力が低くなるという事です。圧力が低くなるという事は気体分子の数が少なくなるという事になります。
大気圧(1気圧)の状態は1ℓという容積の中に気体分子が2.6875×1022個ある状態です。2.6875×1022個より気体分子が少ない状態で密閉された空間が真空という事になります。2.6875×1022個が2.6875×1021個になると、1/10になったので0.1気圧という事になります。2.6875×1020個になると0.01気圧になります。
圧力の正体は気体分子がモノを押す力
気体分子は自由に動き回っています。自由に動き回っていると気体分子同士が衝突したり、気体分子がモノなどに衝突します。1個の気体分子が壁面を押す力は非常に小さいですが、2.6875×1021個もの気体分子がモノに衝突すると1気圧という圧力が発生します。
圧力の単位
圧力は単位面積あたりに働く力です。圧力の単位はいろいろありますが、SI単位系ではPa(パスカル)を使用します。Paは1N/m2の事です。圧力の単位はPa以外もTorr(トール)やkg/cm2(キログラムパースクエアセンチメートル)、気圧(きあつ)、bar(バール)などがあります。換算表は下記の通りです。
Pa N/m2 | Torr mmhg | kg/cm2 | 気圧 | bar | |
Pa | 1 | 7.500×10-3 | 1.019×10-5 | 9.869×10-6 | 10-5 |
Torr | 133.322 | 1 | 1.359×10-3 | 1.316×10-3 | 1.333×10-3 |
kg/cm2 | 9.807×104 | 735.559 | 1 | 0.968 | 0.980 |
気圧 | 1.013×105 | 760 | 1.033 | 1 | 1013 |
bar | 105 | 750.062 | 1.020 | 0.986 | 1 |
すべてを覚える必要はありませんが、単位換算表がどこにあるか覚えていればよいと思います。ただし、年配の方、海外の方はTorrで話をすることが多いので、1Torrは133Paという事は思えておきましょう。
気体分子は自由に動く
気体分子は自由に動いています。自由に動き回り、気体分子同士で衝突を繰り返しています。実はこの衝突があることによって、空気中で音が伝わったり、熱が伝わったりします。圧力が低くなるという事は気体分子の数が少なくなることです。気体分子が衝突してから次の気体分子に衝突するまでに移動できる距離を平均自由行程と言います。大気圧中での平均自由行程は6.67×10-8mですが、1Paの時の平均自由行程は6.67mmになります。
真空の分類
一言に真空と言っても、非常に幅が広いです。気体分子の数で真空を考えると、1ℓの容積中に気体分子が2.6875×1022個から0個までが真空になります。この様に非常に幅が広いので、真空を大きく4つに分けて考えます。
呼び方 | 圧力帯[Pa] | 1Lの気体分子の数[個] |
低真空 | 105~102 | 1022~1019 |
中真空 | 102~10-1 | 1019~1016 |
高真空 | 10-1~10-5 | 1016~1012 |
超高真空 | 10-5以下 | 1012以下 |
(参考)極高真空 | 10-9以下 | 108以下 |
もう一つの考え方として、クヌーセン数で分類する方法です。クヌーセン数とは代表長さと平均自由行程の比になり、対象となる流体(今回の場合で言うと気体分子)は連続体として扱えるか?という数値になります。クヌーセン数が小さいと連続体として考えられますが、クヌーセン数が小さいと気体分子は自由に飛び回っている状態になるので、連続体として取り扱うことができません。
低真空・中真空は連続体として考えられるので粘性流とし、高真空以降は分子流として考えるのが一般的です。
分類 | クヌーセン数 |
粘性流 | Kn<0.01 |
遷移流 | 0.01<Kn<0.3 |
分子流 | Kn>0.3 |
真空の基礎のまとめ
まとめとして、真空の基礎に投稿した記事の要約を記載しています。概念・考え方なので、初めて読むと違和感があると思います。しかし、真空に携わるとこの真空の基礎が重要になってきます。