真空ポンプっていろいろな種類があって、使い分けが必要と言われていますが、何を選んでよいかわからなくて困っています。
はい。真空ポンプは用途によって使い分けが必要になります。本章を見て頂ければ、何を使えば良いかわかって頂けると思います。
真空を作るために必要な機器のひとつに真空ポンプがあります。真空ポンプはいろいろな種類があります。目的に応じた最適な真空ポンプを選ぶ必要があります。最適な真空ポンプを選ぶためには真空ポンプの原理・利点・欠点を知る必要がります。
近くのスーパーに買い物に行く場合、徒歩、自転車、自動車の選択肢がありますが、買うものによって交通手段が変わります。少量であれば徒歩、少量でも時間的に急いでいる場合には自転車、かさばる物を買い場合には自動車と目的によって手段が変わります。
真空ポンプの選定
真空ポンプを選定するときの留意点はいくつもありますが、一番初めに考えなければいけないのが到達圧力です。次に考えるのが真空の質です。
真空ポンプは大きく分けて低真空から中真空の領域で使用できる物、高真空から超高真空で使用できる物にかけられます。低真空から中真空まで使用できるポンプは容積移送式真空ポンプになります。一方で高真空から超高真空で使用できるポンプは運動量輸送式真空ポンプあるいは気体溜込式真空ポンプになります。どの圧力帯まで排気するかによって、使用するポンプが決まります。
真空ポンプには、作動油が必要な真空ポンプ(ウェットポンプ)と、作動油を必要としない真空ポンプ(ドライポンプ)の2種類があります。作動油とは真空ポンプ内の気密を完全にする事を目的として使用されています。作動油はその目的から排気した気体と接触します。一方で作動油を使用しない真空ポンプでも潤滑を目的とした潤滑油を使用しています。
作動油を使用した真空ポンプの場合、油の逆拡散によるチャンバーの汚染が考えられ、真空ポンプから排出される気体には作動油の微粒子が含まれています。
どの圧力帯まで排気するか明確にしましょう。
ウェットタイプの真空ポンプの使用が許容できるか確認しましょう。
※一般的にウェットタイプよりもドライタイプの真空ポンプの方が高価になります。
下の図はウェットタイプの代表的な真空ポンプ、ドライタイプの代表的な真空ポンプの動作できる圧力帯を示したものです。
油回転真空ポンプは大気圧から中真空領域まで使用できますが、高真空・超高真空では使用できません。一方で油拡散ポンプは高真空で使用できますが、低真空・中真空では使用できません。
では、どの様にして高真空にするのでしょうか? 低真空・中真空は油回転真空ポンプを用い、高真空では油拡散ポンプを用います。真空ポンプは使用できる圧力帯が決まっています。高真空、超高真空にしたい場合には複数の種類のポンプを使用します。
真空ポンプの分類
代表的な真空ポンプの種類を下記に示します。大きな分類として気体輸送式真空ポンプは真空容器内の気体分子を吸気口から吸引し、真空ポンプ内で圧縮し、排気口から気体分子を排出します。
一方で気体溜込式真空ポンプは真空容器内の気体分子をポンプ内に取り込むことによって、真空容器内の気体分子の数を減らします。
気体輸送式真空ポンプの中で容積移送型真空ポンプは主に低真空・中真空領域で用いられるポンプが多く、運動量輸送式真空ポンプは高真空・超高真空領域で用いられるポンプが多いです。また、気体溜込式真空ポンプも高真空・超高真空領域で用いられます。
- 気体輸送式真空ポンプ
- 容積移送式真空ポンプ
- 往復動式真空ポンプ
- 揺動ピストン型真空ポンプ(低真空)
- ダイアフラム真空ポンプ(低真空)
- 回転式ポンプ
- 液封真空ポンプ(中真空)
- 油回転真空ポンプ
- 回転翼型油回転真空ポンプ(中真空)
- カム型油回転真空ポンプ(中真空)
- 揺動ピストン型油回転真空ポンプ(中真空)
- ルーツ真空ポンプ(中真空)
- ドライ真空ポンプ
- ルーツ型ドライ真空ポンプ(中真空)
- クロー型ドライ真空ポンプ(中真空)
- スクリュー型ドライ真空ポンプ(中真空)
- 往復動式真空ポンプ
- 運動量輸送式真空ポンプ
- 機械式ポンプ
- ターボ型真空ポンプ
- 分子ポンプ
- ターボ分子ポンプ(超高真空)
- 流動作動式真空ポンプ
- エジェクター真空ポンプ
- 液体ジェット真空ポンプ
- 蒸気ジェット真空ポンプ(高真空)
- 拡張ポンプ
- 拡張エジェクターポンプ
- 分留型油拡散ポンプ(高真空)
- 自己浄化型油拡散ポンプ
- 機械式ポンプ
- 容積移送式真空ポンプ
- 気体溜込式真空ポンプ
- ソープションポンプ(中真空)
- ゲッターポンプ
- サブリメーションポンプ(高真空)
- ゲッタイオンポンプ
- 蒸着イオンポンプ
- スパッタイオンポンプ(超高真空)
- クライオポンプ
- クライオソープションポンプ(超高真空)
真空ポンプにはいろいろな種類があります。それぞれの特徴を理解した上で選定するようにしましょう。