真空の定義で「真空とは、通常の大気圧より低い圧力の気体で満たされた空間内の状態で、圧力そのものではない」と説明しています。ここでは、圧力の正体について解説します。
まずは空気の正体について
私たちの周りには空気があります。空気は窒素分子が約80%、酸素分子が約20%で構成されてます。窒素分子や酸素分子は非常に小さく、目で見ることはできません。ではどれくらい小さいのでしょうか?
おおよそですが、窒素分子や酸素分子の大きさは0.4nm(ナノメートル)になります。この0.4nmという非常に小さな窒素分子や酸素分子(これらをまとめて気体分子と言います)が存在しています。
では、気体分子の数について考えてみましょう。私たちは1気圧という環境で生活していると説明しましたが、1気圧の場合、1ℓの空間に約26,875,000,000,000,000,000,000個の気体分子があります。
気体分子の大きさは約0.4nm
気体分子の数は1ℓという空間に26,875,000,000,000,000,000,000個
真空では非常に大きな数字、非常に小さな数字を取り扱うことが多いです。この様な場合には指数表示を用いることが多いです。指数表示とは下記のような表記になります。
\( 〇.〇〇×10^〇 \)
×より前を仮数部と言い、×より後を指数部と言います。
例えば、7500という数値を指数表示にすると、\( 7.5×10^3 \) という表現になります。同様に0.0075を指数表示にすると、\( 7.5×10^{-3} \)という表現になります。気体分子の数が少なくなるから
真空では非常に大きな数字、非常に小さな数字を取り扱います。指数表示をマスターしましょう。
気体分子の数と圧力の関係
1Lという容積の中に気体分子が2.6875×1022個ある状態が1気圧になります。富士山の山頂は0.6気圧程度なので、気体分子の数は1.6125×1022です。エベレスト山頂では0.3気圧程度なので8.0625×1021個です。0.1気圧、0.01気圧になると、気体分子の数は2.6875×1021個、2.6875×1020個になります。圧力が低くなると気体分子の数が減っていきます。
圧力が低くなるという事は気体分子が少なくなる事です。
下のイラストは気体分子をイメージしたものになります。1気圧の状態が一番左になります。富士山の山頂では気体分子の数は1気圧の状態と比較すると2/3、エベレスト山頂は1気圧の状態と比較すると1/3になります
圧力とは気体分子がものを押す力
このまでの説明で、空気が薄くなるという事は気体分子の数が減ること、つまり、圧力が低くなるという事を説明しました。圧力とは何なのでしょうか?
気体分子は自由に動き回っています。動いていると気体分子同士の衝突、障害物に衝突します。気体分子一つ一つの衝突する力は小さいですが、2.6875×2022個の気体分子となると大きな力となります。この力が圧力です。2.6875×2022個の気体分子が物を押す力が1気圧という事になります。
1気圧の状態では2.6875×2022個の気体分子がありますが、気体分子が少なくなると衝突する力も小さくなります、高度を上げると気体分子の数が少なくなる、つまり、衝突する力も小さくなるので圧力が低くなるという事です。
圧力とは気体分子の押す力の事です。ひとつひとつは小さな力ですが、たくさんあることで大きな力となります。