実際に排気時間の計算を行いましょう
排気時間を計算する真空系について
今回、排気時間の計算を行う真空系は下記とします。
真空容器の容積は1m3とします。真空配管の長さは10m、真空配管の内径は0.1mとします。使用する真空ポンプは10,000m3/hの真空ポンプとします。
使用する10,000m3/hの真空ポンプの排気速度曲線図と、グラフ読み取りソフトで読み取った結果を右に示します。
排気速度曲線図は排気速度はリニア表示、圧力は対数表示の物を使用するようにします。また、排気速度曲線図が設計値なのか実効値なのかの確認が必要です。一般的に設計値の0.8~0.9を掛けたものが実効値になります(どこのポンプメーカーも実効値を測定していますが、開示しているものは設計値という場合があります。今回は実効値として計算を行います)。
排気時間の計算式
排気時間を算出する計算式は下記になります。
\( Δt=t_{2}-t_{1}=2.3 \normalsize{\frac{V}{S}} Log_{10} \normalsize{\frac{P_{1}}{P_{2}}} \)
Δt:圧力P1から圧力P2までの排気時間[Sec]
V:真空容器の容積[m3]
S:真空配管のコンダクタンスを考慮した排気速度[m3/Sec]
P1:初期圧力
P2:目標圧力
真空ポンプの排気速度は圧力帯毎で変化するために、各圧力帯毎での時間を計算し、最終的にはこれらの時間の合計が排気時間となります。
単位を揃えよう
排気時間の計算の使用する単位は[m3]、[m3/Sec]、[Pa]です。一方で排気速度曲線に記載されている単位は[m3/h]となっているので、単位換算が必要になってきます。
真空ポンプの排気速度の単位が[m3/h]なので、[m3/Sec]に変換します。1時間を1秒に変換するので、3600で割ることになります。割った結果が下記になります。
配管コンダクタンスの算出
次に真空配管のコンダクタンスを算出します。粘性流領域の配管コンダクタンスは下記の式で算出可能です。
\( C=1349 \frac{d^4}{l} {P}{}^{} _{ave} \)
蒸気のPaveとはP1-P2の事を指します。算出した結果が下記になります。
実行排気速度の算出
真空ポンプの排気速度は真空ポンプの吸気口の排気速度になります。真空チャンバーの吸気口(場所A)の排気速度を算出します。これはコンダクタンスの合成と言われており、下記の式で求められます
\( \frac{1}{S}=\frac{1}{C}+\frac{1}{S_{0}} \)
算出した結果が下記になります。Sは真空チャンバーの吸気口の排気速度、Cは真空配管のコンダクタンス、S0は真空ポンプの排気速度になります。実効排気速度を算出した結果が下記になります。
排気時間の算出
いよいよ排気時間の算出です。
今までの結果を下記の式に代入します。代入した結果が下記になります。
今回の真空系の場合、2Paまで排気するのに141秒かかることがわかりました。
下記に上記の計算ファイルを添付します。何かの時に活用して頂ければと思います。
次回は、この真空系において考察してみます。